経営方針(診療方針)の明確化
1-2 具体的伝達方法を知る(1)診療方針説明書
前回は求職者に対し、経営方針(診療方針)の理想と現実を伝えないと採用した後で必ずトラブルが起きますと申し上げました。今回は具体的に求人時(面接時)に診療方針(経営方針)を正確に伝えるためにどうすれば良いかを具体的に提案させていただきます。
結論から申し上げますと、診療方針(経営方針)を『 書面化 』することです。「何を今更」という声が聞こえきますが、是非今一度、基本に戻り耳を傾けて頂きたいのです。また、『 書面化 』することが計り知れない相乗効果を生み、その書面が経営者の分身になり得るということを理解して頂きたいのです。これからの作業は決して楽な作業ではありませんが、この苦労は将来、楽をするための作業であると確信していただきたいのです。
さて、いきなり診療方針の「総論」を書面にする作業に入らないでください。なぜかというと、「総論」は時に客観性に欠ける場合があるからである。『診療方針がどうあるべきか』と『診療の実際』が混同してしまうのです。
そこで、先ずは準備として「各論」を書面化するところから始めてください。これは後に医院の運営マニュアルへと成長し、必ず効果を得ることができます。
①エリア(機能)別に整理する
待合室、患者用トイレ、受付、診療室、技工室、カウンセリングルーム、消毒コーナー、
レントゲン室、スタッフルームその他。
各々6W2H(1、いつ WHEN 2、どこで WHERE 3、誰が WHO 4、誰に WHO 5、何を WHAT 6、どうする・どのように HOW 7、なぜ WHY 8、いくらで HOWMUCH)で、具体的に仕上げることが理想です。人の役割、物の役割、経済的役割、空間の役割、そして、社会的役割と効果を明確にします。
1、 各エリアの理想的な姿を書面にする。
2 、各エリアの現状(問題点)を把握し、書面にする。
3 、各エリアの理想と現状(問題点)のギャップを分析し、書面にする。
4 、どうすれば、理想的になるか、改善策を書面にする。
余談ですが、なぜこの様な作業をしなくてはならないかは、けっして私の経験則からだけではありません。心理学、生物学、経済学、組織論にわたりホーリスティックな論点をもつアーサー・ケストラーのホロンという理論(全体は部分の集合体であり、部分は自律している)に基づくものです。私は主観的な理論展開を信じませんし、自分の判断(情報収集、分析、伝達、実行、改善修正、交渉、評価、等)が、客観的かつ科学的であるかを、常に自問自答している懐疑主義者でありたいと思っています。
本題に戻ります。
②目標とする診療方針(経営方針)を書面にする。
②-1 ①-1、①-2でまとめた各論をバランスよく総論としてまとめる。
③ 2 ①-3、①-4は、採用優先順位の高そうな人物のみに伝達する書面として仕上げる。
限られた面接時間で、誰にでも、何人にでも、同じ説明をできる自信のある方は、これらの作業の必要はありません。
今井 義博